美術作品の見方 初期キリスト教美術の観点から
・はじめに
あなたが美術館に訪れ、美術作品の前に立ったとき、なにを考えますか。
ほとんどの人は「ああ、きれい!」「横の作品もきれいだ!」このようなしだいで、ポンポンと進んでいっているように思う。
たしかに美術作品を鑑賞し感動することで、脳内でセロトニンが活発化しストレスを減少できることが期待されている。
では、美術館で観察力をあげつつ、ストレス解消につながる方法を見ていきます。
1.美術作品を鑑賞するときに意識すること
美術館で美術作品の前に立ったとき、私は三つの質問を自らに問う。一つ目は「この作品を好きか?」二つ目は「作者は誰だろうか?」そして三つ目は「作者はなぜこの作品を描いた(制作した)のか?」である。
美術館の来館者は美術作品の前に立ったとき、上記のような手順で鑑賞している人は少ないはずです。言い換えれば、美術館の来館者は美術品をじっくり見ていないということになります。何故なら、ある美術館で行われた調査によると、来館者が一つのアートに費やす時間は、平均で10秒前後という結果が出たからです。
認知心理学者のアビゲイル・ハウゼン(Abigail Housen)がニューヨーク近代美術館(The Museum of Modern Art, New York)で行われたギャラリートークやレクチャーの参加者を対象に、調査を行った。結果、プログラム終了後ですら、その内容をほとんど憶えていなかった。つまり、多くの来館者は作品を見ているだけで、内容がほとんど頭に残っていない。(フィリップ・ヤノウィン,京都造形芸術大学アートコミュニケーション研究センター訳 『学力をのばす美術鑑賞』淡交社,2015年)
では、絵画などの美術品を前にしたとき、どのように「この絵きれいだね、いい感じだね」で終わらずに頭に残す、あるいはもっと楽しく鑑賞できるのか。
2.時代に応じてある程度の知識を身につける
まずはじめに、美術へのある程度の知識をつけることです。
例えば、イタリアのサンタ・マリア・マッジョーレ(Santa Maria Maggiore)聖堂にある初期キリスト教美術のモザイク画。
モザイク画とは6世紀半ば頃、ビザンツ帝国(東ローマ帝国)で盛んになった技法。壁に色のついた石片やガラス片を漆喰で埋め込んで模様を描いていきました。
この聖堂では、神の使いである大天使ガブリエルが聖母マリアにイエス・キリストを妊娠したことを告げている場面「受胎告知」がある。これは字を読めない人々でも理解できるように制作されました。(図1)
キリスト教徒はモーセの十戒*1によって、神様や成人の像の前で祈る偶像崇拝が禁じられていた。そこで「目で読む聖書」として図1のようなモザイク画を制作することで信徒を増やしていきました。
このように初期キリスト教美術であるモザイク画の知識があると、モザイク画に対しての見方が少なからず変わるはずです。
また、モザイク画以外にも字が読めない人のために施された美術がある。それは教会の建築方法で表れています。教会でも様々な建築方法があり、その中でも「ロマネスク様式」が代表的です。ロマネスク*2とは「ローマ風」という意味。バシリカ*3を基本形とし、中央の身廊の両側に列柱で区切られた側廊をもつ。
ラテン語などの文字を読めない人々のために、聖書の物語やイエスの教えがタンパン*4に描かれています。また多くが、西側に正面入り口を構えています。(図3)
参照:サント・マドレーヌ聖堂
3.まとめ
・人は美術作品の前に立つとどのように意識するべきなのか、また美術館の来館者は美術品を見ているようで見ていないという事実。そして知識をつけることによって美術品の見方が変わり、また教養豊かになれる第一歩でもあります。
・仮に美術作品への知識がない場合でも鑑賞の仕方を変え、観察をするよう心がければ観察力が上がり、ビジネスの場面でも役立つことが期待されています。
・今回は初期キリスト教美術におけるモザイク画の見方とともにロマネスク様式にみられるタンパンによって、字を読めない人々を布教したことについて触れた。
4.参考文献
・美術館での作品の見方について記されています。
・絵画や彫刻など様々な美術作品の歴史について記されています。
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