ストラーダ's blog

とある大学で史学を専攻しています。主に西洋美術、近現代史(フランス)、世界遺産、脳科学のアウトプットをします。

パリを救った知らざれる人物

・はじめに

1944年の8月にレジスタンスとパリ占領軍の間でパリ解放をめぐる戦いが始まりました。

連合軍の接近と遅れるドイツ側の援軍、追いつめられたドイツ占領軍にヒトラーから「ただちにパリを爆破せよ」との命令が下される。

パリ爆破の命令を無視するよう、スウェーデン人のラウル・ノルドリンクが司令官のコルティッツ将軍に説得する。

1.1944年のパリ

1944年6月6日、連合軍のノルマンディー上陸作戦でパリを占領していたドイツ軍は敗戦が決定づけられました。

 

レジスタンスが連合軍の接近によって活気づき各地で蜂起していた。そして8月19日未明、パリを解放するため反旗を翻します。

 

パリの至る場所に「総動員」と書かれたポスターが張られ、CNR(全国評議会)*1共産主義レジスタンスがしだいに数を増やし市庁舎、区役所などを占拠し、それらの建物に三色旗が翻った。

異変を察知したドイツ軍はこれらに応戦することでパリ市内や郊外で前哨戦が発生します。

 

8月22日の午前、英米連合総司令官アイゼンハワー(Dwight Eisenhower)はルクレール(Phillippe Leclerc de Hautecloque)将軍のパリ進軍に同意*2しました。

 

ルクレール師団は兵員1万6800人と約5000の車両を持ち、パリまで200kmの地点にいた。ルクレール師団は、アメリカ第四歩兵師団の支援を受けました。

他方では、ドイツ軍の援軍がパリに向かっていたので、どちらかが先に到着するかによって、パリでの徹底抗戦が繰り広げられ、パリへの甚大なダメージが出るか否かが決まります。

 

また他方では、パリ市民が立ち向かうドイツ軍パリ防衛司令官フォン・コルティッツ(Dietrish Von Choltitz)将軍は、1944年8月9日に着任したばかりで、パリの破壊命令とともに徹底抗戦の命令を受けていました。

 

ヒトラーは「パリを敵の手中に渡してはならぬ。もし手中に渡すときには、パリは廃墟となっていなければならぬ。」とコルティッツ将軍に命じていました。

 

2.ラウル・ノルドリンク

ラウル・ノルドリンク(Raoul Nordling)は1881年11月11日にスウェーデン人とフランス人の母親の間でパリで生まれました。

 

彼はスウェーデン人でありながら、その生涯のほとんどをパリで生活した。また話す言葉はほとんどフランス語でした。

 

彼はパリ駐在のスウェーデンの総領事で二度の大戦中、中立を保ちました。

彼は常にパリのことを想い、常にパリのために奔走しました。第二次世界大戦中に起きたパリ解放をめぐる戦いで追い詰められたドイツ軍の従順な軍人コルティッツ将軍にヒトラーによる命令を無視するよう説得しました。

 

ノルドリンクはコルティッツに「あなたは戦争に敗れた。まもなくあなたは逮捕され、裁判にかけられますが、パリの市民に報復をした人にはならないでください。」と説得をし、少なからずコルティッツはこの言葉に影響されました。

ノルドリンクとコルティッツは何度も議論や交渉を交わしていたので少なからず信頼関係が築かれていました。

 

また、連合軍がパリに到着しドイツの援軍は到着していなかったため、敗北が決定的でした。

 

8月25日の明朝、コルティッツ将軍は降伏を受け入れました。

 

ノルドリンクのコルティッツ将軍への説得でパリを爆破の危機から救った。

もし、彼が説得をすることが出来なかったら、あるいは説得をしていなかったら。現存するエッフェル塔ルーブル美術館ノートルダム大聖堂アンヴァリッドオペラ座などの歴史的文化遺産破壊され存在しなかっただろう。

 

なので、ノルドリンクはパリの救世主(Sauver Paris)だと確信しています。

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凱旋門の前に立つノルドリンク総領事

 

3.最後に

パリを爆破の危機から救い、市民を助けたことが評価されました。1949年にクロワ・ド・ゲール(Croix de guerre)、レジオンドヌール(La Légion d'honneur)が授与されました。

1958年にはパリ名誉市民に任命されました。

 

このように彼はパリのため奔走し活躍したが、残念なことにノルドリンクは現在、フランスの若者にほとんど知られていません。

ノルドリンクがパリのために奔走し、現在のパリがあるということがフランスのみならず、全世界で知られることを願っています。

 

4.参考文献

 ・ノルドリンクの回顧録

Sauver Paris

Sauver Paris

 

 ・アイゼンハワー回顧録

Crusade in Europe (English Edition)

Crusade in Europe (English Edition)

 

 ・パリ解放について詳しく記されています。

Eleven Days in August: The Liberation of Paris in 1944 (English Edition)

Eleven Days in August: The Liberation of Paris in 1944 (English Edition)

 

 

 ・パリ解放について詳しく記されています。

パリ解放 1944-49

パリ解放 1944-49

 

 

 ・私が影響を受け、研究をするきっかけとなった映画です。

パリよ、永遠に [DVD]

パリよ、永遠に [DVD]

 

 

*1:南部三大組織を「統一レジスタンス運動」としてまとめあげた組織。

*2:パリへの進軍は連合軍の糧食補給と輸送の問題に大きな負担を強いることになるということで、優位性を与えられていなく、アイゼンハワーは躊躇していた。