初期キリスト教美術
・はじめに
初期キリスト教美術は主にモザイク画を用いてイエス・キリストの教えや旧約・新約聖書の内容を読み書きができない人々に「目で読む聖書」として伝えるためにつくられました。
西ローマ帝国が滅亡した後に、ゲルマン文化とキリスト教文化が融合して生まれた美術です。
古代ギリシア・ローマ時代の彫刻や絵画は立体的でしたが、キリスト教の影響で人物や建物などはどれも平面的に描かれました。
1.初期キリスト教美術
キリスト教は元々ユダヤ教徒のナザレ*1のイエスによって始まった宗教改革運動であり、ユダヤ教から発生した宗教です。
つまり、イエス・キリスト自身も、そして彼の弟子たちもユダヤ教でした。
なので、キリスト教が国際宗教として公認されたときもキリスト教はユダヤ教の聖典である旧約聖書が使用されていました。
旧約聖書ではモーセの十戒*2により、神様や聖人の偶像を崇拝することを禁じていました。
しかし、文明的に後進圏であったアルプス以北のヨーロッパにおいて、読み書きができない人々にキリストの教えや旧・新約聖書の内容を図像化しモザイク画として「目で読む聖書」をつくりました。
図1の「パンと魚の奇跡」ではイエス・キリストが5つのパンと2匹の魚を手に取って感謝の祈りを唱えてから、5000人の人々に分け与えた。
この奇跡から、イエスは比類なき権威をもっており、全能であることがよく分かります。これはイエスの本性と地位を更に裏付けています。
「パンと魚の奇跡」や「受胎告知」などがモザイク画で頻繁に描かれ、信者を増やしていきました。
2.キリスト教公認以前のキリスト教美術
313年のミラノ勅令*3によってキリスト教が公認される以前は、ローマ帝国によって弾圧されていました。
なので、キリスト教徒たちは地下共同墓地である「カタコンベ」に集まり、ひっそりとお祈りをしていました。
彼らは石棺やカタコンベの壁や天井にフレスコ画を描き信仰心を高めていた。(図2)
カタコンベに描かれていたフレスコ画には「善き羊飼い」の図像が描かれています。
これは、ローマ帝国の葬礼美術として描かれていた死後の永遠の生命の願いでした。
善き羊飼いとはイエス・キリスト自身のことです。
イエス・キリストは自らを善き羊飼いであると語っており、キリスト教会は聖職者は「牧人」で、信徒は「羊」であると比喩しています。
3.まとめ
キリスト教が公認される前もカタコンベと呼ばれる地下墓地でキリスト教美術は存在していました。
また、カタコンベの壁や天井にフレスコ画を描くことによって信仰心を高めていました。
やがてキリスト教が公認されるが、聖典はユダヤ教の旧約聖書であったため偶像崇拝が禁じられていました。
しかし、文字を読めない人々のために図像でイエスの教えや聖書の内容を伝えるモザイク画が発展しました。
4.参考文献
・古代ギリシア・ローマ時代から近代の歴史までを記しています。
・絵画の見方を知れる良書です。
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